MIYAZAWA
THE BOOMの活動では収まりきらない宮沢の魅力を全面に打ち出したアルバム。ブラジル~アルゼンチン~NY~沖縄~東京と旅して制作された意欲作で、アジア人の視点で捉えた歌を満載。 連日連夜、米連続テロ事件関連の報道が雨霰のごとく降り注いでくる昨今、TV画面を横目に(4)を聴くと身に詰まされる。おそらく、宮沢はこの作品をレコーディングしていた2001年5月頃には、世界がこんな事態に陥るとは夢にも思わなかったに違いない。旬な詞だから書き直しを頻繁にしたということだが、“テロリストの教祖には裁判を”というくだりには驚愕を覚えた。 宮沢としては、3枚目のソロ・アルバムで、THE BOOMから離れた個人的なアートワークなのだが、作詞家としての視点と切り口の鋭さと普遍性に共感を覚える。 レコーディングは、ブラジル、ニューヨーク、沖縄、東京で行なわれ、今回初めてアート・リンゼイが参加していて、音のセンス、構築は文句なしに秀逸。日本人のアイデンティティとして、沖縄(ウチナー)の旋律と今は県内で禁止されてしまった“毛遊び”を題材にする(7)の発想もアンチ体制で芸術的なアプローチだ。意外に(3)のラップが上手かった。 (小林泰介) --- 2001年12月号