RE:code
今から三十年前。ハイパー・アポトーシスと名付けられた未曾有の【遺伝子災害(ゲノム・ハザード)】によって、世界は五十代以上の人口を九割失う。それは医学の進歩による異常高齢社会により、破綻寸前となっていた日本を救う形となった。 若者の間に蔓延していた厭世観は取り払われ、社会に光が射したのも確かだったが、政治や経済に限らずほとんどの分野が高齢者によって回されていた日本は、他国よりも長く混乱が続くことになる。 大学生の宇佐見蓮子は、宇宙開発の分野で若くして才を発揮している学者でもある。 彼女の祖母であった宇佐見菫子も、同じく宇宙に携わる研究で科学の進歩に多大な貢献をした。尤も菫子は、先のハイパー・アポトーシスで他の高齢者同様、既に他界している。 ある日、蓮子は思い出したように菫子の遺品を整理していた。菫子の研究は、その死から三十年が経った今でもセンセーショナルなもので、菫子の死は日本の宇宙開発を一世紀後退させたと言われたほど。同じ道を生きる蓮子にとっても、祖母の遺品は宝の山も当然であった。 科学に関する情報が無数にある中で、蓮子はひとつの日誌に注目した。 『秘封倶楽部活動日誌』――そう書かれていた。 かなり古い日誌で、記された年月から逆算すると、ちょうど菫子が今の蓮子と同じくらいの歳に行われた活動が記録してあった。 幻想郷/境界を見る一族/マエリベリー……マエリベリー? 蓮子は、それと全く同じ名を持つ友人のことを思い出す。宇宙開発に関連するようなワードを見つけ出すことは出来なかったが、日誌の最終ページには、こうあった。 『遺伝子災害の起こし方』 蓮子は背筋が冷たくなるのを感じながら、『マエリベリー』の正体を確かめるため、大学へと足を向けた。 「いらっしゃい、そろそろ来るような気がしていたの」 「ハイパー・アポトーシスは……また起きる?」 「そしてそのための私達、秘封倶楽部でしょ」 (∴)^o^)「という夢を見たんだけど」 [ | ^o^ ]「へぇ」 ※フィクションです