暁 -AKATSUKI-
「暁 -AKATSUKI-」(首里城再建基金プロジェクトCD収録曲) 2019年10月31日、故郷沖縄の首里城が焼失した。 沖縄県民にとっての誇りであり、アイデンティティともいえる大切な宝物。 その喪失感はとてつもなく大きく、魂が崩れ落ちてゆくようであった。 音楽を通して首里城の再建を応援しようとの想いをひとつにする沖縄のミュージシャン、 沖縄を愛するスタッフの皆さんが集結しアルバムを制作する運びとなった。 沖縄の民謡を中心に選曲。長く歌い継がれてきた作品へのリスペクトを込めて、また、民謡が幅広い世代に親しみやすくさらに愛されるようにと新たなアレンジを加えた。 このアルバムの中で、1曲オリジナル曲を書き下ろしたのが「暁 -AKATSUKI-」だ。 首里城焼失というウチナーンチュにとっての深い哀しみの中から、もう一度みんなで力を合わせ歩んでゆこうというメッセージを込めた。 沖縄を想うとき、時代に翻弄された歴史、戦争の悲劇を思わずにはいられない。 多くの尊い命が犠牲となった。戦後の貧しく苦しいときも人々は助け合いながら生きてきた。 きっといつの時代も喜びや悲しみを歌い踊ることで昇華させ、芸能で心を慰めてきたのではないだろうか。 今、思いもよらぬ感染症で先行きの見えない不安な日々が続いている。 音楽が根本的な問題を解決できるわけではないが、せめて人々の心に寄り添い、束の間の癒しや励ましにつながることを願ってやまない。 そういった意味でも、この楽曲は頑張る人へ向けたエールなのである。 首里城再建基金プロジェクトCD作品 「国頭サバクイ」(首里城再建基金プロジェクトCD収録曲) 沖縄の木遣り歌。 「サバクイ」(捌吏)とは、間切(今の町村)の上級役人を指す。 琉球王朝時代、首里城を建築、修理、増築するのに使われた材木は、ヤンバルと呼ばれる沖縄本島北部の山から伐り出された。 首里王府の御用達の材木を役人の指図のもとに、島民らが総がかりで運ぶ様子がうかがえる。 ヤンバルの広大な森から材木を伐り出し、角材などに加工して船に積み、与那原の港まで運搬し、そこからさらに首里王府まで運んだという。 特に材木の伐り出しと搬出は危険を伴う重労働である。 駆り出された島民が力を合わせて行う共同作業の中、歌で呼吸を合わせ互いを労いながら、士気を高めていたのではないのだろうか。 興味深いのは、歌の中に笑いが組み込まれていること。 「イーイヒヒヒーヒ」「アーアハハハーハ」というお囃子の部分、これは笑いを音楽化したものだ。 沖縄民謡において、お囃子には大した意味がないということをよく聞く。 しかし、この歌は笑いが重要な存在だったようで、笑い声で魔物、悪いものを退散するという意味を持ち合わせているそうだ。 この勇ましくも荘厳な歌が、今回のアレンジで新たな息吹を吹き込まれたように感じる。 ひとつひとつの楽器が加わり重なってゆき、やがて大きなうねりとなる。 かつての木遣り歌が、現代の沖縄版「ボレロ」に生まれ変わった!