MARVELOUS

安定感のある歌は確実に力強さを増し、言葉尻のニュアンスや抑えた歌唱に豊かになった表情が覗く。MISIA3作目のオリジナル・アルバム。夢の実現だったDCTとの共演(12)、『やまとなでしこ』の主題歌だった(10)、ヒップホップのエネルギーが横溢してた(7)……『LOVE IS THE MESSAGE』以降のヒット曲(&シングル収録曲)をアルバムのなかに聴き、あらためて思った。2000年の彼女の活動はとても果敢だった、と。 品行方正な男性の語りから一転、勢い引き込まれるのは熱気充満する空間。降りそそぐリズムに反応し熱く風を起こす! と歌われるのを聴き、あのホラー的な雰囲気さえ漂わせた不敵な音に乗り“白い翼を持つ天使に、連れてって”と歌った(7)が2000年最初の新曲で、(2)(9)を手掛けたSAKOSHINとMISIAの共作(編曲も)だったのを、象徴的に思い出す。あの曲で彼女は大きな一歩を踏み出していたのだ。ビート~サウンドの強さは直接的なだけでなく、彩りや少し捻ったふうにも表われ、微妙な音を多用した旋律に美しくも激しく舞うストリングスが絡んでミスティックな雰囲気を醸す(6)(作・編曲は鷺巣詩郎)などいい例で、そうした耳を惹くサウンドが歌詞と響き合う。MISIAの歌詞はまっすぐで清々しい印象があるけれど(本作で(4)以外が彼女の作詞)、生きてくうえでの強さを望む思いは(7)(9)に顕著なだけでなく、その思いのほうが残るラブ・ソングも少なくない。“信じることで強くなれる”と「BELIEVE」で歌った頃よりもっと能動的な、“攻めの姿勢”に相応しいサウンド。それがたぶん基調にあるから、作風的には対極にある、超王道のオーケストラをバックに堂々と歌う(10)が新鮮に輝くのだし、それともまた好対照的の密やかな(11)(曲も彼女)にも強く心が動かされる。 MISIAっぽいね、と何をやっても言われたらいいと彼女は言っていた。そのためには挑むし闘う、そんな姿勢、勇敢さを聴く。初のセルフ・プロデュース・アルバム。