Arco-Iris
「Arco-Iris」 詠み人不詳 地下に黒髪と琥珀の眸の子供産まれゆ 子供、虹の女神の名を冠す やがて娘は晴れ無き世界へと赴き 罪を贖う一族の少年と出逢う定めなり 永久の命持つ真実の番人は 約束の地にて彼らの来訪を歓迎す そして長き灰色の時代は終焉を迎えゆ ―――これ神の怒り鎮めゆ物語なり 世界から色が消えた。 神の怒りに触れたのだと、ばば様は仰った。 空気も、大地も、海さえも毒にまみれ、 降り続く雨は、希望さえも灰色に染め上げていく。 遠い昔、空は青かったという。 私は知らない。暗い地下の世界が、私の揺り籠だったのだ。 皆は口々に言う。 『お前こそ、希望の光だ』、と。 虚ろな瞳を此方に向け、私の名前を唱えるのだ。 過去を捨て去れず、果てない諦観を携えた人々に私は恐怖を覚えた。 私は諦めたりしない。 世界に青空を取り戻せば、きっと、幸せになれる。