GO AHEAD!
前作 『IT'S A POPPIN' TIME』に記録されているライブの雰囲気からも分かるように、東京を中心とした山下への音楽的評価は決して低いものではなかった。当時の山下のレコードセールスはその8割近くが東京周辺におけるものだった、という。CM音楽等において、匿名性の下で活動する作家・ミュージシャンとしての山下の需要は高かったが、レコード会社の契約ミュージシャンとしての、換言するならば「トータル・キャラクター」としての山下への評価は、技術はあるが(セールスの)数字が期待できない、というものにならざるを得なかった。 山下自身もこの状況には強い危機感を抱いていたようで、この時期には商業音楽の制作・流通に関して徹底的に学んでいた、と証言している。しかし、レコード会社側も色よい反応を見せず、セールスの向上の兆しがない状態の中、山下は、ソロミュージシャンとしての自らのキャリアを終えざるを得ないのではないか、という心境に至る。そういう状況下で、このアルバムは制作された。 「これが最後になるかもしれない」という思いの中、山下は、自らの広範な音楽指向を縛ることなく、書きたい曲を書き、録音しよう、と考えた。そのために、このアルバムには、山下が後に「五目味」と言い表したように、シカゴ・ソウルやファンクのフレイバーを持つ曲から、カバー曲、果てにはフィル・スペクター的なアレンジの曲まで、一人のミュージシャンのセルフ・プロデュースアルバムとは思えない多彩な作風の曲が収録されることになった。このアルバムに収録されたファンク・ナンバー "BOMBER" によって、ソロミュージシャンとしての山下のキャリアは大きく加速することになった。