Yuhki Kuramoto Best Selection
テレビドラマの音楽をいくつも手掛け、アルバムも1980年代半ば以来コンスタントに発表している作曲家・ピアニストの倉本裕基だが、その名前が広い層にまで知られるようになったのは、日本より韓国の方が先だった。なぜそうなったかは、このベスト盤の1、2曲目あたりを聴いてみればある程度まで合点がいく。10代のアイドルにさえバラードを歌い上げる歌唱力が要求される韓国では、倉本の書くような、抒情的で、巧みにクライマックスの用意されたスローテンポの曲の人気がとても高いのだ。クラシックをベースに、ピアノがストリングスや木管とからむ落ち着いたサウンドは、1960~70年代によく聴かれたヨーロッパのムード・オーケストラに通じる感覚を持つ。また、ピアノ・ソロの曲ではショパンの影響が濃い。「ニューエイジ」はカウンターカルチャーの匂いを持ち、「癒し」はリラックスという目的に奉仕するが、倉本の音楽からは、そのどちらとも違うロマン的なテイストが感じられる。(松本泰樹) TVドラマ「君が見えない」などの音楽作りやロンドン・フィルとの共演盤を発表しているピアニスト倉本裕基のデビュー10年を記念してのベスト選曲集。クラシック音楽ベースのメロディとサウンドは,リラクゼーション音楽にもなる心地好さを持っている。