森繁久彌追悼企画 心に詩を~美空ひばり・森繁久彌 二人の声~
美空ひばりと森繁久弥、もうこの二人については皆様も十分ご存知、改めて何の说明もする事はないでしょう。 かたや、昭和22年、九歳の若さで芸能界に身を投じ、今日迄、22年もの长い间、我国戦后の歌謡界の歴史を作り続け、今もなお、前进を続けてやまない歌の女王。 かたや、NHKのアナウンサーから终戦后、演剧界に身を投じ、常に大众演剧と取りくみ、喜剧から、大型のシリアスドラマまで、体からにじみ出る、洒脱な话术と、すべて、「人の心は善」だと信じ、これを我々にうったえ続けてきた一方の雄。 この伟大ともいえる二人が、一つの舞台で一绪に、自分达の生き方、そして芸术感、人生感をしみじみと私たちにうったえました。それが、この“心に诗を”の舞台でした。 森繁久弥と美空ひばり、二人の芸と歌と组み合わせたら、きっと面白い作品が出来る……これは、私たち芸能界に生きているものにとって、一つの大きな梦であり、また、歌を爱し、舞台を爱する皆さんにとっても、一つの梦ではなかったでしょうか? 私たちは、昭和42年3月、二人が初めて、テレビで共演した时の事をおぼえています。一见困难のようにみえたこの企画も、フジテレビの冈山尚干ディレクター、构成者の保富康午氏の情热と、森繁久弥、美空ひばり、ご両人の理解の下にスムーズに事は运んだのでした。この放送の时、いそがしい出演者二人の事、リハーサルの时间もなく、公开录画の直前、二时间程の打合わせだけですぐ本番に入りました……でも、その结果は、皆さんもご存知だと思います。当初45分の予定のものが、いつの间にか一时间半もたってしまい、私たちスタッフも时间の超过に気がつかない程、引きつけられ、异例ともいえる全篇ノーカットで再放送という事になったのでした。 しかし、テレビの场合いくら再放送をしても、私たちの手元にいつも二人の芸をおいておくわけにはいかないのです……その时から、私たちは二人の芸を、レコードとして永く记录しておく必要があると感じたのでした。私たちスタッフは何度も、案をねっては、书きなおしました。しかし、二人の心情、アドリブの楽しさは、どうしても、スタジオ录音では、现わす事が出来ないという结论に达したのでした。そこで、考えたのが、レコード界でも珍しい公开录音によるレコードを作ったらという事でした。しかし、これも、二人のスケジュールがどうしてもあわなくて、私たちは涙をのんだのでした。 その时、お正月の大阪労音の公演で、この梦の颜合わせが実现するというニュースが飞びこんだのでした。私たちは、こおどりをしてさっそく、この“梦の颜合わせ”を実况录音に计画を変更し、ここに皆様にこの梦のレコードをお届けする事が出来たのでした。 森繁久弥、美空ひばりの交游については、皆様方の中でもご存知の方は少ないと思います。ある时は人生を论じ、歌を论じ、あるいは芸を论じる…単なる游びではなく…二人の交游には深いものがあります。その根底にある二人の考えは、このレコードの中にも、随所に出てきますが、それは、“人间の未来の姿は善である”という考え方です。 “人が一生悬命になるっていう事は一番尊い事ね”これは美空ひばりの口ぐせです。 “日本人はすべて诗人である。世界中どんなにさがしても、こんなにも自然を爱し、歌を爱する民族はいないだろう”森繁久弥はよくこうつぶやきます。 このレコードの中から、皆様に、二人の身上の一部でもお伝え出来たら、幸に思います。 いそがしい二人、今日もまた、この日本のどこかの空の下で、お互いに自分の剧団をかかえ、座长としての责任を守りながら、别々に仕事をしていることでしょう……そういう二人と、ファンの皆様の间をこのレコードが、心と心を结ぶきずなになる事を祈りながら、このレコードをお届けしたいと思います。