NOTE
音楽とはそもそも存在理由自体が、生きることのお祝いだったりしたのに、現代では癒し、励ましを端から目的にしたような事態が、悲しくも増えてしまった。ことに大のオトナにとっては本当に一人、もしくは気心の知れた大切な人と気恥ずかしくなく聴ける音楽は貴重だろう。大貫妙子のこの2002年の作品は、まさにそうした根本というか音楽の品性にあふれている。山弦(小倉博和、佐橋佳幸)の名曲の「祇園の恋」に大貫が歌詞を書き下ろした「あなたを思うと」に始まり、新旧の盟友と呼べるミュージシャン――細野晴臣、小原礼、沼澤尚、林立夫、フェビアン・レザ・パネ、森俊之、槇原敬之らとの、音一つ一つの意味を知る人たちならではの豊かな交歓は、日本のポップミュージックの至宝だ。