ルージュ
ちあきなおみアーカイブス・アルバム復刻シリーズ。「ルージュ」他、全12曲収録のアルバム。\n\n\nこのアルバムは、ちあきなおみのオリジナルアルバム『ルージュ』(1977.7.25)の復刻版です。\nすべての表現を一人でこなすシンガーソングライター。それだけに皆、個性たっぷりで、独特の世界を持っています。しかも、当時全盛のニューミュージック界にあって、取り分けて個性的な三人―中島みゆき、井上陽水、因幡晃―の作品に、ちあきなおみが果敢に挑んだのがこのアルバムです。\n\nちあきなおみは、このアルバムの制作に当たって、彼らの魂の叫びをストレートに表現するために、音で飾り立てることをせずに、あえて必要最小限の編曲に止めたものと思われます。それは彼女の矜持でもあったと思います。\n\nタイトルに「ルージュ」が使われていたり、半数を占める曲数の多さから、中島みゆきの作品に目が行きがちですが―もちろん「うかれ屋」、「流浪の詩」、「雨が空を捨てる日は」といった優れた作品もありますが―何といっても、このアルバムで注目すべきは井上陽水と因幡晃の作品です。\n\n井上陽水の作品はいずれも素晴らしい仕上がりですが、中でも「氷の世界」が格別の出来映えで、“孤独に閉塞する心の叫び”を―ムンクの叫びのように―見事に表現し切っています。\n\n因幡晃の作品も同様に、全てが本家本元を凌ぐほどの出来映えです。特に「サンデー・モーニング」は、ちあきなおみの抜群の歌唱テクニックと、その絹のような光沢ある歌声とを存分に堪能できる作品になっています。\n\nコロンビア時代の最後を飾った2つのアルバム―この『ルージュ』と直後に発表された『あまぐも』―は、全作品にあって一際異彩を放ち、ちあきなおみの“歌の万華鏡”を、アクセントの効いたキラメキある素敵なものにしてくれたことは確かです。