Lover Light
濃厚なソウル・フレイヴァーを,ポップかつクールに仕立てた1stアルバム。歌の上手さもネイティヴ英語も,これ見よがしじゃないところがイイ感じ。いい意味での下世話さを秘めた彼女のソウルvoと歌詞には,単なるR&Bポップス以上の可能性を感じる。 初めて会った時彼女は、自分が上京したきっかけは阪神大震災だと、あったか味あふれる関西弁でごく普通に語ってくれた。実際被害に遭い、今自分にできることは何か? と問うた末の結論だったという。UAと同じ所属事務所、ソウル・フィーリングたっぷりの音楽性という情報だけを取るとある程度のイメージが良くも悪くも出来上がってしまうだろうけど、それだけで彼女を決めつけるのは早合点。SAKURAの存在が貴重なのは、同じ“愛”を歌っても男女間の恋愛を超えた精神世界にこそ最大の関心があり、その純粋さが楽曲に真空パックされている点なのだ。女性特有の不安や切なさが渦巻き、愛し愛される喜びが蔓延したその詞はどれもいたってシンプル。だけどその向こう側にある生々しい感情や時空を超えた遥かなる願い、生に対する強い思い入れに共感する。いや憧れに近いかもしれない。彼女ほどストイックにそれを追求できたなら……。同じヴァイブレーションを感じる人にぜひ聴いてほしい。 (ささきまる) --- 1998年03月号