The Dearest Fool
山本耀司,鈴木慶一,高野寛などの{仲間}との共演は,高橋幸宏というアーティストのキャパシティの広さをあらためて感じさせる作品となった。徹底したポップな感覚があるからこそ,時代の先を読んだ音楽をきっちりと提示できているわけで,さすがの奥深さ。 2枚に分けてリリースされたカヴァー曲集に続いて、1年半月ぶりのリリースとなるオリジナル・アルバム。タイトルは、スティーヴ・ジャンセン、鈴木慶一、山本耀司、高野寛、まりん、そしてレーベル・メイトの和田純子、森脇松平といった同年代および下の世代の“バカ仲間”たちとのコラボレーションで作られていることからきたもの。 打ち込みメインによる“時代に逆行した”音づくり、ロマンティックでありながらもユーモラスな歌詞など、YMO時代から続くユキヒロ・ワールドの集大成であり、ミレニアムに向けてのひとつの時代の終わりと、新たな時代に向かう意志を込めた記念碑のようでさえある。打ち込みによる多彩でグルーヴィなリズムとヴォーカルのコンビネーションには、テクノとポップスへの深い愛情と、彼にしか作ることのできないサウンドへの自信が感じられる。ある面で、高橋幸宏こそがYMOだったことも再確認できるはずの傑作。 (鈴木祐) --- 1999年11月号