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Kathalshame

Kathalshame

落下 僕は僕であるがために、僕という個を維持するために、僕という存在を生かす為、 ただひたすらに憧憬を抱かねばならない。そして僕は高度333メートルの高みに生かなければならない。 遙かなる天上の高みから、全てを見定める為に。 躊静 揺れる摩天楼。軋む鉄骨が僕を揺らす。風が早く早くと背を押すように唸りを上げた。 目眩がした。心臓の音が段々耳障りに感じてきた。 さあ、行こうか。全てを全てに以て僕の清算を始めよう。 戒慙 風を感じた。この世界の重さを知った。これは罪の重さだ。 障み、恙み、罪焦がれた者達が積み重ねた、逡巡たる、霊験なる然なる過ちだ。 消え去る者に花束を、残り征く者に弔いを。 翳り、陰り、可下っていくその時まで、この目と目の両を以て最後まで見据えるとしよう。 蝶彩 幾枝にも連なる記憶が駆け巡る。 赤、青、黄、極彩色に描かれたその光景はあまりに眩しくて目を閉じていたかった。 痛みを伴うそれに僕は背を向ける。 悔壁 ただひたすらに闇があった。闇と闇が入り混じり、何もかもが見えなくなった。 それは虚無だった。為した事がない者の表れだったのかもしれない。 もしかしたら本当は悔やみたかったのか、赦しが欲しかったのか、 解かったとしても、解かりたくなかった。 死堺 セピアの色が極彩色に融け、僕の視界は幽玄から無間を通り越した。 連続事象は空っぽになっていたはずだった僕の脳味噌に止めを刺し、いよいよ道は切り拓かれた。 この地上を取り巻く数多に鉄槌を、乱世たるこの現に疵痕を残そうではないか。 淡焉 永くて、儚くて、そしてあっという間の出来事だった。 僕が僕として要られるその数秒は実に気持ちが悪く、そして心地よかった。 この”夢"は僕の背中を押してくれるに相応しいほど、綺麗事と虚飾の入り混じった記憶だった。 実に浅はかで馬鹿らしい、僕の夢だ。 『対岸の話』 どこかで声が聞こえた。 それは悲しげで、儚いようにも聞こえた。 それは喜び、嗤っているようにも聞こえた。 それが誰の声なのか、はたまた自分の声だったか、確かめる術も無かった。

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