決定版 ザ・ピーナッツ
ザ・ピーナッツといえば、1960年代後半のグループ・サウンズ黄金期の一時代前、いわば、現代歌謡曲の草創期ともいえる時代には、すでに大活躍していたデュオである。私などは、そんな時代を記憶しつつも、何となく、その「一時代前」という古臭いイメージに、これまで、ザ・ピーナッツを聴くのを敬遠していた面があったのだが、今回、このアルバムの20曲を通して聴いているうちに、そんなイメージは、見事に吹き飛んでしまった。 このアルバムに収録されている、特に、宮川泰、すぎやまこういちといった、現代歌謡曲の大御所が作曲した名曲の数々は、ザ・ピーナッツのポップス調の現代的歌唱もあいまって、時代の古さを全く感じさせることがなく、現代の歌謡曲としても、十分、通用する楽曲ばかりなのだ。 ザ・ピーナッツの紡ぎ出すハーモニーの美しさも格別であり、その陰に隠れて気が付きにくいのだが、二人とも、よく伸び、通る声と、確かな歌唱力も備えている。一卵性双生児の姉妹だけに、声質も、音域もほとんど同じであり、聴き様によっては、デュオとしては、やや、コントラストに欠けるところがないでもないのだが、やはり、古今の日本歌謡界のデュオの中では、ザ・ピーナッツが、頭抜けた存在であることは、疑いのないところだろう。 このアルバムにある「恋のバカンス」や「恋のフーガ」などは、実力派歌手の高橋真梨子、小柳ゆきから、アイドルの元「モー娘。」W(ダブルユー)に至るまで、さまざまな歌手によってカヴァーされ、歌い継がれてきている。ザ・ピーナッツのこうした珠玉の名曲の数々は、ザ・ピーナッツが残してくれた貴重な原盤だけでなく、ザ・ピーナッツをリスペクトする多くの歌手たちの歌唱によって、今後とも、永遠に聴き継がれていくに違いない。