roots of style
米倉利紀のデビュー10周年記念盤。10曲のラブ・ソングを、ソングライターとして、そしてヴォーカリストとして描ききった力作。彼が愛する街ニューヨークに捧げる曲も胸を打つ。初回盤のみ、写真集つきのボックス仕様なのでファンの方はお早めに。 デビュー10周年、昨今にぎわいを見せるJ-R&Bブームのはるか前から圧倒的な歌唱力と独自の世界観でジャパニーズ・ソウルの一翼を担ってきた米倉利紀。レコーディングを毎回ニューヨークで行なっているので、常に最新NYミュージック・シーンの空気を吸収し、アルバムごとにサウンドの幅を広げている。本作でまず耳に焼きつくは、洗練されたコーラス・ワーク、ソフトかつ大胆な展開をみせるメロディの数々。極上のNYサウンド+米倉のバイタリティ。停滞は後退なり――米倉のサウンドからはそんなスピリッツが伝わってくる。そして、忘れてならないのが“歌”。恋愛を中心に米倉の世界は流れていくが、けっしてバラ色の日々ではなく、まるで小部屋で過ごしているような親密感、正直がゆえ生まれる葛藤、あるいは哀しみ……。ハートウォームとクールの間、曲に自然に身を任せると、ふと傍らに愛する誰かがいるような気持ちになるから不思議だ。 (石塚隆) --- 2002年04月号