Miroir―鏡の向こう側に―
アイドルを半強制的に卒業し、女優としてひと皮剥け始めた頃ひょっこり出されたオリジナルアルバム。わたくしアイドル時代の菊池桃子には何ら興味なかったので本作リリースの経緯についてとかもよく知らないのだが、実際聴いてみるとある意味アイドル=歌手としての自分に落とし前つける面があったかの様な気分にさせる。プロデュースも菊池自身。 彼女のヴォーカルは例によって腹に力の入らないウィスパーなタイプなのだが、それを内省的な視点に置き換える事を試みているのが解る。菊池自身が手掛けた曲も含め作詞は全て女性作詞家の手による(菊池は2曲で作曲も担当)もので、主に恋愛に纏わる女性の心象風景が展開される。風邪をひいての1人の思索を詞う「窓」、「乙女心も 今日はいいね。」と淡い思慕を楽しむ「ハロー・ミスター・マンディー」、夢みる心を喪わずけれど真剣に恋愛に対峙する「恋をして…」etc.と、ある程度の経験を積んできた等身大の女性像が息づいている。そこに生活臭はないが、往時の浮世離れとは決定的に違う。自分を見つめるスタンスがしっかりと、ある。 また、「ガール・フレンド」「愛*未来」で聞ける日野皓正(作曲も担当)のトランペットや「五月の雨」でのボサなタッチ、ギターのみをバックに始まる「鏡」etc.とサウンド的にも落ち着いた中に洒落た響きを持たせており、そんな処にも大人ぽさを感じさせる。 この後の菊池は鈴木雅之とデュエット(94年)した他は「だし」のCMで口ずさむ程度(笑)で音楽とは一線を画す事からも、矢張り自身の音楽の集大成をここで示した様に思われる(と思ったら今年再び鈴木とのデュエットが復活との事。たまにでもオファーあれば歌う、てスタンスなのかなぁ)。