キャリー・アウト
本田雅人には夏が似合う。明るい音色、弾けるリズム、スピードと高揚感のあるメロディは、夏の海岸線をドライヴしているような開放的なイメージがある。T-スクェアのサックス・プレイヤーとして活躍していた本田が同バンドを退団してから約1年。安定したポジションから離れてソロになり、自分のやりたいことをやるという姿勢がしっかり表われてきたように思える。ソロ2作目となる本作ではすべての楽器を彼自身が演奏して“100%本田雅人”な仕上がりになった。トレモロの利いたギターは熱帯夜のようにファンキー、ベース・ソロでは夕暮れの静かな海が瞼の裏に見え、クラリネットのとぼけた風味は砂浜でごろりと横になって一息つくには最適といった具合だ。マルチな才能を発揮しながらも、決して片手間ではなく、楽器ごとに本田的な夏色があるところが良い。要するに夏一色の夏づくし。仕事を放り出して、海に走って行きたくなる一枚だ。 (松永誠一郎) --- 1999年08月号