円舞曲(わるつ)
1974年5月に発売されたちあきなおみのアルバム復刻盤。3拍子のリズムに阿久悠による詞がもの哀しいタイトル曲「円舞曲(ワルツ)」、ペドロ&カプリシャスの名曲「五番街のマリーへ」ほか収録。 この4月20日に揃って復刻された4点をもって、コロンビア時代のオリジナルアルバムのうち、初期の数点を除いた分が出揃ったことになります(ただし、2点ある『もうひとりの私』だけは変則的な形で―1つのアルバムに統合されて―昨年10月にリリースされました)。ファンのひとりとして嬉しい限りです。 そして4点の中では、もっとも早い時期に発売されたのが、この『円舞曲(わるつ)』(1974.5.25)で、直前に発売されたシングル4曲―「夜間飛行」(1973.6.25)、「あいつと私」(1973.11.25)、「円舞曲(わるつ)」(1974.3.10)とそのB面曲「女の旅」―と、70年代初めの歌の数々、大ヒットした歌もあれば、ヒットには繋がらなかったもののファンの間では根強い支持のある歌、そういったカヴァーするには厄介な歌8曲とから構成されています。 このアルバムを通して改めて思ったことは、ちあきなおみの歌は“何とドラマチックなのだろう”ということです。ファンを惹きつけて止まない彼女の魅力(というよりも魔力と呼ぶ方が相応しい)の一端が、そこに潜んでいるように思います。 小坂明子の歌う「あなた」は、ミリオンセラーとなった大ヒット曲ですが、私は好きではありませんでした。しかし今回、ちあきなおみの歌を聴いて、乙女チックな夢物語と思っていたものが、そうではないということを初めて知りました。 また、布施明のこの歌を聴きなれているひとにとっては、ちあきなおみの歌う「積木の部屋」に最初は戸惑いを抱くかもしれません。でも、何度か繰り返し聴いていると彼女のその魔力の秘密が浮出てくる筈です。 このレコーディング直後に体調を崩して、ちあきなおみは入院・療養を余儀なくされますが、そういったことなど微塵も見受けられない魅惑の歌声に、あなたも搦捕られてみては如何?